遥か昔から日本人の暮らしと共に存在し、人々の心の拠り所として親しまれてきたお寺や神社。信仰や祈願の場所としてだけではなく、初詣やお祭りといった年中行事やイベントが行われる場所として、様々な人が参拝にやってきます。
最近は御朱印ブームや社寺(神社とお寺のこと)巡りを趣味とする人もたくさんいて、じつは知れば知るほど楽しくなる「神社」と「お寺」。
そんな日本文化の象徴ともいえるお寺や神社ですが、その違いは何なのでしょうか?
お寺や神社に何度も訪れて知っている気がしても、違いをいざ説明してと言われたら似ている部分も多く、意外と困ってしまうもの。
それぞれの宗教の特徴や、それによるさまざまな違い、寺院と神社の役割などについて解説します。
何となく知っているようで、似ている部分も多く、うまく説明するのは意外と難しいお寺と神社の違い。そもそもお寺と神社とはどのように定義されているのでしょうか。ここでは寺と神社の定義や具体的な違いを比較して見てみましょう。
お寺とはお墓や仏像があるところ、神社とは鳥居があるところといった見た目による違いがよく知られています。神社とお寺では信仰している宗教に大きな違いがあります。
それぞれどのような宗教なのか解説します。
お寺と神社は宗教施設ではありますが、お寺は「仏教」の宗教施設で、神社は「神道」の宗教施設です。では、仏教と神道はそれぞれどのようなものなのでしょうか。
仏教は古代インドで生まれた釈迦(ブッダ)を開祖とする宗教で、大陸から中国を経由して日本に伝来しました。
宗派は様々に存在しますが、釈迦を教祖として崇拝する点は同じです。
お寺は仏教のための宗教施設で、仏教を信仰する僧侶や尼僧が住んで仏教の教義を学んだり、修行をしたりする場所で、「寺院」とも呼ばれます。そこには仏法に従えば国を護り鎮めることができるという考えがあり、祈りの場として整備されていくようになりました。本殿には「本尊」と呼ばれる仏像や曼荼羅が据えられ、信仰の対象となっています。
本尊以外の仏像や掛け軸なども祀られ、文化を保存・継承する場となっているお寺もあります。かつてお寺は仏の教えを民衆に伝え、民衆の苦しみを救う教育と福祉の場で、生活の中心にありました。今日では、葬儀や墓参りの機会に足を運ぶほか、観光スポットとして訪れることも多くなっています。また「寺」だけでなく「院」「庵」「大師」など名前がついている場合もあります。お寺では現世でのご利益の他に、死後に極楽浄土へ行けるよう願うことができます。
神道は日本古来の宗教で、複数の神を信仰しています。日本には古くから、山、森、海、風といった自然を崇拝する文化があり、そこからあらゆるものには神が宿るとして、自然だけでなく人、物、土地など様々な存在を神として崇拝する、「八百万(やおよろず)の神」という概念が生まれました。
このように様々な神を信仰する宗教を神道と呼びます。
中でも最高位とされる神は、太陽の神である「天照大神(あまてらすおおみかみ)」です。また神道には教祖がおらず、決まった教えも存在しないため、「教」ではなく「道」という言葉が使われています。
神社は日本各地で信仰するそれぞれの神を祀った宗教施設で、神の住む場所とも考えられてます。神社はかつて信仰されていた自然のあった場所や、神聖な儀式を行っていた場所が起源となっている場合が多く、神に対して感謝を伝えたり、現世でのさらなる幸せを祈ったりする場と考えられてきました。仏教と大きく違うのは、教祖や経典がなく、また像を信仰の対象としていないこと。死を汚れとしているのでお墓はなく、お葬式も行われません。神に仕える神主や巫女が「祭祀」を行い、神々と民衆をつなぐ役割を持っています。
神社の名前は「神社」以外にも、「神宮」「宮」「大神宮」「大社」「社」の6種類が存在し、規模や格式の違いにより名前が分けられます。最高位は明治神宮、伊勢神宮などの「神宮」とされています。
お寺と神社の違いのひとつとして、祀っている仏や神が目に見えるところにあるかないかがあげられます。お寺に祀られる仏像は多くの場合見ることができますが、神社に祀られる御神体は通常見ることができません。
お寺では釈迦如来や観音菩薩といった「仏」を祀っており、その寺で最も大切な仏を「本尊」と呼びます。
仏教において、崇拝の対象となるのは仏様です。仏様は悟りの度合いによってランク付けされていますが、一番格が高いのは阿弥陀如来だといわれています。全国にある寺院の多くがご本尊に安置している仏像は、阿弥陀如来です。
お寺には仏の姿を形にした「仏像」が目に見える場所に安置されており、その仏像に向かって手を合わせ拝みます。ただし、中には公開されない「秘仏」も存在します。
仏教の教えではもともと、形あるものを拝むことはしておらず、仏像は存在しませんでした。
しかし、釈迦が亡くなってから数百年経過した頃から、仏の教えをよりわかりやすく伝えるために、絵図や彫像が作られるようになりました。
神社では信仰するそれぞれの神を祀っており、「御祭神」とも呼ばれます。祈りを捧げる対象は「八百万の神」との言葉があるように、さまざまなものを神格化しており、特定の人物や動物、植物だけにとどまらず、山や川、月や太陽といった自然物などもその対象となされています。
その中でも最高神は天照大御神であるという考えが一般的です。あらゆるものが神となるため、中には菅原道真や徳川家康といった実在する人物を祀る神社もあります。また、一つの神社に複数の神を祀る場合もあります。
神社では、神が宿るとされる鏡や剣、玉などを「御神体」という形で安置しています。中には山や岩、滝といった自然そのものを「御神体」としている神社もあります。しかし、御神体は神聖なものであるとして、通常人の目に触れることはなく、神社の社殿の中でも奥に位置する「本殿」に安置されています。

お坊さん
お寺の場合は、お坊さんや尼さんが修行しています。お寺でお経をあげたり修行をしたりする人は「僧侶」といい、一般には「お坊さん」とも呼ばれています。
お坊さんは、お経を唱えたり説法をしたり、お寺の管理をしたりする人たちです。
お経は釈迦が説いた教えを記録した教典のことです。主に教えを説くことを仕事とする僧侶は「和尚」、寺に住み込みで働く僧侶は「住職」と呼ばれます。
また、女性の僧侶の場合は「尼」と呼ぶのが一般的です。尼さんは、宗派にもよりますが、お坊さんの女性バージョンという認識で基本は良いです。男性の僧と同じく仏事に関する法要を行っています。
他にも葬儀を行ったり、寺や墓地の管理を行ったりするのもお坊さんの仕事です。
神社で神に仕えているのは、神職さんと巫女さんです。神職(しんしょく)というのは、よく「神主(かんぬし)」または「宮司(ぐうじ)」と呼ばれます。
神職の中でも神社の責任者となる神職が「宮司(ぐうじ)」と呼ばれます。
神職の仕事は神社の管理の他、祭事を執り行ったり、神様に祈りを捧げたり、神様と私たち人間の間を取り持つことをしています。
神職の補佐する役割を担い、神事の際に神様に捧げる舞「神楽(かぐら)」を舞うのが「巫女(みこ)」と呼ばれる女性です。神子(みこ)、舞姫(まいひめ)、御神子(みかんこ)と呼称される場合もあります。
また、神道には教義がないため経典が存在せず、説教なども行いません。その代わり、神の言葉を伝えたり、神に願いや感謝を伝えたりする「祝詞(のりと)」を唱えます。
お寺と神社の主な違いとして、神社では葬儀を行わないことがあります。これは神道では死を穢れとして嫌うため。神が住む神聖な場所である神社を汚すことになってしまうと考えられています。結婚式などは神社で、葬儀はお寺で、という考え方が一般的となっています。
お寺と神社には、そもそもの成り立ちが違うように、建築様式にも大きな違いがあります。
それぞれ特徴的な造りの建物が存在します。もちろん建物はそれぞれの場所によって異なりますが、ここではお寺と神社によく見られる、代表的な特徴を紹介します。
お寺にある建造物は、仏像などの礼拝の対象となるものを祀る「伽藍(がらん)」と僧侶が居住する「僧房」とに分かれます。
お寺は、もともとは僧が仏教修行をする場所でしたが、釈迦(ブッタ)が神格化していくにつれ、仏塔や仏像やそれらを収める仏殿などが誕生しました。
お寺は一般的に、入口に「山門」や「仁王門」と呼ばれる門があり、門の中には「阿形(アギョウ)」と「吽形(ウンギョウ)」の金剛力士像が、安置されていることが多いです。
仏陀を表す「塔」と仏像を安置する「金堂」などを内部に配置する造りとなっています。
お寺の建造物の屋根は、中国大陸に由来する瓦でできていることが多く、装飾が施されて重厚感が感じられる造りになっているものも多いです。また、お寺では仏像を常時拝観することができます。
寺の入り口には「山門」と呼ばれる門があります。これは、もともと寺が山の上に建てられていたためその名がつきました。。
門とはいえど、大きな屋根が付いていることが一般的で、中には2階部分に部屋を備えた「楼閣式」と呼ばれる立派なものもあります。
また、門の左右両側には、入り口で寺を守る守衛のような役割を持っている「仁王像」が安置されている場合あり、神社の狛犬と同じく阿吽(あうん)の姿をした一対の像です。
外敵を威嚇し、伽藍などを守流守護神で、仏像としては金剛力士像と一般的には呼ばれています。左右それぞれの仁王像に、別々の名前がついています。向かって右側の仁王像が阿形(あぎょう)像、向かって左側の仁王像が吽形(うんぎょう)像という名前です。これは、「阿吽(あうん)の呼吸」の阿吽から来ています。
立派な作りの山門や仁王像は、それ自体が観光名所となることもあります。
本堂とは、本尊である仏像を安置してある、お寺で最も重要な建物のことです。金堂(こんどう)と呼ばれるのは、堂内が金色に装飾されているからではなく、金色の仏像を置いたことが由来だそうです。通常、お寺の伽藍配置は中心の本堂を他の建物が取り囲む形になっています。
法堂(はっとう)は僧侶が説法を行うための講堂として使われる建物です。寺の中心部にあり、本堂(金堂)の次に重要な建物とされています。
仏教的建築における塔の総称。塔の名は、ストゥーパを音訳した卒塔婆(そとば)・塔婆(とうば)を略したもの。
ストゥーパは、本来、釈迦の遺骨 (舎利) を安置する場所で、古墳のような土饅頭の墳墓の上に棒状の傘蓋を立てた一種のお墓です。「仏舎利(ぶっしゃり)」と呼ばれる釈迦の遺体や遺物の一部を安置した塔を「仏塔」と呼びます。
インドでは紀元前3世紀頃が起源とされています。釈迦入滅のとき、その遺徳をしのんで仏舎利などを10か所に分骨したといわれ、当時の支配者アショカ王はそれを集めて再分配し、各地にストゥーパを建設したと伝えられています。
日本には、中国を経由し伝播したといわれています。日本では、三重塔、五重塔というような多重構造の仏塔が多く、仏塔の象徴的な姿はお寺のランドマークのような存在です。
神社は神が住む神聖な場所とされています。お寺と比べると建物の種類は少なくシンプルな構造ですが、お寺と共通する部分や神社だけの特徴も存在します。神社の建造物の屋根は、茅(かや)や檜(ひわだ)といった自然由来の材料で作られていることが多く、シンプルながら繊細な造りになっています。
神社は、神様が祀られている参拝場所としての役割があり、一般的に入口に「鳥居」、その先にある「参道」の脇には身を清める「手水舎」があり、さらに進むと神様が祀られている「本殿」があります。ご神体は神が宿る場所とされることから、人の目に触れることがないように配慮されています。
神社を最も象徴するものが、地図記号にも使われている鳥居です。神社の入り口にあたり、神聖な区域である境内と実世界とを分ける境界線として、邪悪なものが侵入するのを防ぎ、そこが聖域であることを示す門としての役割を持つとされます。
2本の柱と2本の横木で構成されており、朱色の鳥居がよく知られていますが、黒、白、色のない鳥居、また石造りの鳥居もあります。
また、入り口の左右両側には「狛犬」が設置されており、仁王像と同じく神社を入り口で守る守衛の役割を持っています。灯籠と同じように、参道や拝殿の両脇に設置されています。狛犬は高麗犬の意味で、獅子とともに一対になって置かれているとする説もあり、その起源も名称が示すように渡来の信仰に基づくもので、邪気を祓はらう意味があるといわれています。
阿吽(あうん)の姿をしているのが一般的で、神社によっては狛犬ではなく、狐や牛などの別の動物の場合もあります。狐は稲荷神社、牛は天満宮に見られ、共にお祀りされている神様の神使(お使い)であるとされています。
狛犬の表情は神社や地域によって実に多様です。各地の神社を訪れた際に、いろいろな表情をした狛犬を見つけて、眺めることもお参りをする楽しみの一つになるかもしれません。
神社の御神体を祀っている場所を本殿または神殿と呼びます。神社で最も重要な場所であると共に、本殿には神が宿る御神体が安置されています。神様が宿る神聖な場所であることから、通常人の目に触れることがないように配置されます。
神様を祀る本殿は通常行くことができないため、神社に参拝する人は「拝殿」という場所でお参りをします。お賽銭を入れたり、祈祷やお祓いを受ける場所としても知られています。
また、本殿と拝殿を繋ぎ、お供えものをする場所である「幣殿(へいでん)」が設置されている神社もあります。
今回は、お寺と神社具体的な違いを比較しながら解説してきました。お寺も神社も特に気にすることなく訪れていた人も、それぞれの特徴や違いを知ることで、参拝がより楽しく印象に残るものになると思います。
知っているようで知らないお寺と神社の違い。ふと聞かれた時にスラスラと説明できれば、友達に一目置かれるかもしれません。このページで解説した他にも、お寺と神社の参拝方法、御朱印の違いなど、お寺と神社の細かな違いはたくさんあります。
違いを知ったうえで、是非両方の空気感を楽しみながら、御朱印巡りを楽しんでください。
